皆さんは「マイクロバイオーム」という言葉をご存じでしょうか。ここ数年、ヒトにおける腸内フローラと様々な疾病との因果関係については熱い議論がかわされたこともあり、知名度も非常に高くなってきております。しかし、最近では新たに「人と共生している微生物叢」を研究することにより、実に素晴らしい結果が得られるのではないかと言うことで、現在も研究が進められています。
アメリカでは、既に2012年の段階である程度研究が進められていたようですが、ここ日本においてもようやくマイクロバイオームに関する情報が出始めたように思います。
では、このマイクロバイオームと呼ばれる存在が、今後医療業界にどのような影響をもたらす可能性があるのか。その一端をご紹介してまいりたいと思います。
微生物叢を指す言葉であるマイクロバイオームですが、例えばヒトのマイクロバイオームと表現した場合、人体内外に棲むすべての微生物のことを指します。マイクロバイオームは、ある科学者が「新たに見つかったものであり、まだ調査がなされていない臓器」と呼ぶほどのものであり、微生物叢の状態から個人を特定するための研究も既に進んでいます。そして、この微生物叢は、我々が直面している難しい疾病の診断、あるいは治療方法に関して、その全てを変えてしまう可能性を秘めているとも考えられているのです。
現在では、様々な研究、実験が進められており、大変面白い事実も明らかとなっています。例えば、私たち人間は不特定多数の他者と交流を行いますが、そこでは私たちが「体外にまとっているマイクロバイオームを交換している(影響を与えあっている)」という事実などがあります。
また、マイクロバイオームの中にはプロバイオティクスやプレバイオティクス等も含まれますが、これらは主に食事によってコントロールされるという見方が一般的でした。しかし、動物レベルの研究においては、食事以外の要因によっても微生物叢が大きく変化するかもしれないとする結果も公表されているのです。
ワイツマン科学研究所の科学者が、ある成果を発表しました。多数の人々が同じ食物を摂取した場合に、個々ではどのような違いが出るのかを研究したものですが、その結果によると「食べ物が人に与える影響度合いは、正に人それぞれであり、予想を行うことは難しい」とされています。例えば、特定の栄養素が不足していたとしても、万人が同じ食品から特定の栄養素を補給できるのかと言われれば、必ずしもそうではないということになります。
摂取した食品は、消化器系で消化され、微生物によって分解された後に栄養素へと変換されていきますが、この能力には個体差があり、その影響度合いを事前に知ることは難しいというのが現在の見解のようです。
また、ある医療系の企業は既にマイクロバイオームを利用した新たな診断方法を開発しています。ヒト腸内におけるマイクロバイオームを分析することによって、腸内の異常を正確に発見することのできる技術を始め、病気予防あるいは健康状態のコントロールに関して、マイクロバイオームは新たな時代を創り出すかもしれません。
現在、DNAの状態は生活環境下において変化する可能性が示唆されており、病に関しては遺伝以外の要因にも注目が集まっています。その中で、マイクロバイオームと様々な疾病との因果関係が証明されることになれば、歴史的にも大きな転換点になる可能性があります。
現在の最先端医療では、遺伝子レベルでの解析結果を元に疾病との因果関係をひも解いていますが、その役割がもしかしたらマイクロバイオームになり変わられるのかもしれません。
今はまだ研究中ではありますが、ここ数年の内には、更なる研究成果が発表されていくでしょう。マイクロバイオームに関しては、今後も医療業界との関係を注視していきたい所です。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |