厚生労働省からの通達もあり、全国的に"地域医療への取組みの推進"に関する動きが活発化している状況ではありますが、その中で需要の高まりを見せているのが在宅医の存在です。地域医療の活性化と言えば、地域医療ネットワークシステムの構築について言及される事が多いようですが、やはり実態として活動を行う現地の医師がいなければいかなるシステムも十分な機能を果たすことは難しいでしょう。
医療業界全体の動きとしては慢性的な医師不足が叫ばれていますが、実態として「地域医療格差が強い」という事実があることに関しては、既に皆さまもご存じのとおりです。そのような状況の元、自治体レベルにおいて地域医療のレベルを高めていかなければならないという状況が続いているのです。
そこで、今回は需要の高まりが続く「在宅医」には一体どのようなものが求められているのか、その役割についてまとめてみたいと思います。
"在宅医"と呼ばれる医師の業務は、何も特別な事を行う訳ではありません。地域診療に根差した医療機関であれば、少なからず訪問診療などを行っている所も多いものです。そのような機関に所属し、在宅されている患者様の診療を定期的に行う、あるいは在宅医療に関わる関係者に適切な指示を行う役割をメインに担っているのが在宅医という存在です。
在宅医にとって、担わなければならない最も大きな役割は、従来でいうところの"伝統的かかりつけ医"としての業務となります、都市部と違い、過疎地域などでは大型の医療機関がある事も少ないため、地域医療に根差した医療機関が患者様の受皿として機能しているわけですが、来院される患者様だけを対象にするのではなく、訪問診療も併せて行う機関は決して少なくありません。
特に、山間部などの僻地においては医療機関のある所まで出ることが出来る患者様の数も圧倒的に少なくなります。そのような状況の中では、やはり訪問診療を行うことのできる医師が強く必要とされているのです。
訪問診療を行う医師の存在は、何も各個人である患者様だけが必要としているわけではありません。地域医療に貢献することができ、訪問診療までこなせる医師の存在は僻地においては非常に大きな存在となっています。皆さんもニュースなどでご覧になられたことがあるかもしれませんが、村落の単位においては医師が1人いるか、いないかが村の存続に関わるような大きな問題にも発展しかねないのです。
このような状況を密かに抱えている村は多く、たびたび"高待遇の条件で求人募集を行っている"ものの、場所が場所だけになかなか人が集まらず、頭を抱えているという話はよく聞きます。
都市部、あるいは都市部の近郊であれば医師も勤務を行いやすいものの、どうしても僻地となると決断を下す事が難しいものです。しかし、これからの発展が見込まれる地域医療において「都市部以外の在宅診療医」は、各地域を存続させるためにも更に需要が高まってくることが予想されます。
僻地などの過疎部では、基本的に人口そのものが少なくなっており、村には数十人しか存在しないといった話も決して珍しくはありません。その中で、在宅診療医が担う役割の中には「命の見守り手」としての役割も課せられていると考えられます。同居の家族もおらず、孤独な生活を送る高齢者が増加する中で、定期的に訪問してくださる医師の存在は正に家族と近いものがあると言えるでしょう。
超高齢化社会へと歩を進める日本国内では、高齢者の増加だけではなく、患者数の増加、地域医療の衰退など、多くの課題が次々に現れています。現状、地域医療におけるシステムが健全な状態で機能している自治体がどの程度存在しているのかは、その統計をとることが難しく、実態を把握するには至りませんが、少なくとも"在宅診療医"を切望する声は当面止まないのではないでしょうか。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |