先日、東京医科大学の一般入試において、合格者数を意図的に制御する、高い地位の方の子供を不正に合格させるなどの問題が明るみとなり、様々なメディアでも取り上げられました。この問題は発覚してから、10月の正式調査発表に合わせて現在も調査等が進められているところです。
では、これまで長きに渡り秘密裏に行われてきた医科大学の不正問題。これが明るみにでることによって、どのような変化が訪れるのでしょうか。事件を振り返りながら、少し考察してみたいと思います。
まずは東京医科大学における、不正入試事件の概要についてまとめてみましょう。 今回の事件で明らかになった点が幾つかありますので、そのポイント毎に絞っていきたいと思います。
1.女性の受験生と、浪人回数の多い男性の扱いに、意図的な制御がなされた。
これが主の問題として明らかとなりました。2006年にはこの問題が生じていたということが捜査の結果で分かっており、女性の受験者並びに、浪人回数が多い男性の受験者が"不利になるように"得点を操作していた可能性が明らかとされています。調査委員会が指摘をした事に関しては、学校の常務理事がその事実を認め、正式に謝罪を行っています。
2.卒業生などを優遇していた
上記のような得点操作が明るみに出ただけでなく、いわゆる「裏口入学、不正合格」を行っていたことも捜査の結果、判明しました。調査委員会の報告書では、合格させるために個別で調整が行われていたこと、2017-2018年では5人以上に対して、このような調整が行われたとされています。
3.今回の不正に関し、不合格になってしまった受験生の追加による合格を検討
女子受験生の点数が減点されていたという不正の事実が明るみに出た事で、既に不合格を通知されていた受験生に対して、追加合格を検討するという話がなされています。ただ、捜査に関して関連資料が押収されていることから、この対応に関しては少し時間がかかるとのこと。
4.得点を意図的に操作するように指示が飛び、これは10年を超えて続いていた
2006年頃にはこの不正が行われていたとのことで、10年を超える期間"堂々と"不正が行われていたといことになります。全ての人間がこの事実を把握していたわけではなく、現執行部は不正への関与を否定しています。
この不正事件が発覚後、しばらくはニュースメディアでも速報が出されていましたが、今はそのような情報が鎮静化している状況です。不正発覚後、続報として流された情報としては、不正入試に関する事実を調査するべく、第三者委が設置されたこと、医学部の合格率に関しては8割以上の大学において男性の方が上と結果が出ている(文科省の緊急調査結果)旨が報道されていました。
ただ、今回の緊急調査では不正が他の大学にあるかどうか、までは深く追求するレベルのものではないとみられるため、実際にはどのような体制で行われているのか、他に不正を行っている医科大学はないかは明らかにはされていません。
東京医科大学の件に関しては、10月に正式な調査結果が発表される見込みです。
医師となる人材を集め、育てるはずの機関が不正を行っていたという事実は非常にセンセーショナルなもので、またたく間に一面を飾りました。信じていた受験生、親御様はその期待を裏切られたという結果になりますが、不正が10年を越えて続いていたという事実は決して軽んじられるものではないでしょう。
このような不正は一般に判断することが難しく、疑ってかかることもできません。ただ、一つ分かるのは、"どのように作られた組織体やシステムであっても"信じられるかどうか、信頼に足るかどうかは分からないと言うことです。
誰かが信じているから、マジョリティな意見だから等の安易な理由で何かを信じるようなことはせず、大切な判断、何を信じるのかはあくまでも自分自身の物差しで決定付けることが大切です。
大変な事件でしたが、まだ調査段階であり解決したわけではありません。全てが明るみに出た後、対策についても協議が進められていくことでしょう。誠に遺憾な問題ではありますが、今後はこのような事実が出てこないよう、ただ願うばかりです。
![]() |
ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |