"ナノレベル"の技術を各分野に応用する動きが継続的に進められているところですが、進化を続けるナノテクノロジーが医療業界にどのような恩恵をもたらすのか、非常に気になるところですよね。そもそも、ナノテクノロジーとは「原子、分子」レベルにおける極めて小型となる機器、あるいはマテリアルなどを応用する技術のことを指します。
ナノメートルレベルにおいて、技術的にコントロールすることが可能となった頃に着目され、今も様々な分野での研究が進められていますが、医療業界においてどのような革新をもたらすことになるのか、その事情についてはご関心を持たれている方でなければ、あまりご存じではないかもしれませんよね。そこで、今回は医療業界にナノテクノロジーがどのようなものをもたらす可能性があるのか、その内容に少し触れてみたいと思います。
ナノテクノロジーの進化は神への挑戦とも言われる技術であり、様々な分野において今後も研究が進められていくのは間違いありません。医療分野においても、DDS(ドラッグデリバリーシステム)の開発を中心に、多数に治療法開発への応用が期待されています。
ナノテクノロジーの開発に関しては、素晴らしい技術である半面、「何かしらの問題が発生する可能性」に関して憂慮される向きもあります。また、新たな技術であることもあり、技術開発・研究にはまだまだ時間がかかりそうです。ただ、今後は様々な分野において革新をもたらすことは間違いないでしょう。
ナノテクノロジーが医療業界で実現・実用されている例はまだほとんどありませんが、既にその技術が投入されている例が2つほどありますので、少しご紹介したいと思います。
1. DDS(ドラッグデリバリーシステム)への応用
DDSは既に活用されている技術のため、皆さまもご存じでしょうが、実は既にこの技術にもナノテクノロジーが使用されています。通常、DDSに使用される粒子のサイズは150nm程度のものが主流となっていますが、微粒子のサイズを適切なものに調整するにあたって、ナノテクノロジーを用いて作られた膜で薬剤を包み込み、治療効果を高めるという技術が既に利用されているのです。
この技術は、今後抗癌剤をナノ粒子に入れこむことによって、がん組織のみに対して、これまでより効果的に投薬することを可能とするものとしても、期待されています。また、既に幾つかの抗がん剤はDDS製剤として実用化されています。
2. ナノテクノロジーを用いた新素材の開発
カテーテルの主な材料はセラミックですが、この素材にはそもそも固い、弱い、という欠点がありました。しかし、この素材に対して、生体適合性の高いと思われるナノ微粒子を結合させるという考えのもと、「焼成ハイドロキシアパタイト高分子分散性ナノ粒子」というものが開発され、その欠点は克服されました。今では、このような技術の応用がカテーテル以外の医療分野、その他の産業に対する応用についても研究されているところです。
医療分野におけるナノテクノロジーの応用は、正にこれまで到達することのなかった革新的な治療法を生みだす可能性が期待されています。様々な分野での応用が期待されているわけですが、中でも既に広く知られているのは「体内病院を作るナノマシン」というものです。
これは、ナノレベル、つまり超小型の操作可能な機器を用いて、検査、治療、投薬など様々なことを行うという方法で、国内ではもっとも実現が期待されているものの一つと言えます。人体に無害なナノマシンが常に体内を監視し、癌等の病態を検出、そして診断し、更に治療まで行うとすればどうでしょうか。
ナノマシンを通じた診断を医師がするのか、それともAIが診断するのか等、今後気になってくる部分も多いにありますが、いずれにせよ革新的な技術が医療業界に激震を起こすであろうことは容易に予想できるところです。
もう一つ、ご紹介した技術として「皮膚の電気特性の変化」を通じて、水和レベルをりアルタイムに受け取ることができる技術の実現が有望視されています。
このテクノロジーは、ナノ技術の進歩によって実現が見えてきたものですが、なんといっても衣類に応用可能と言う所がポイントです。今でもウェアラブルデバイスが浸透し始めているところですが、これまでの技術にナノテクノロジーが融合することによって、医療の形は大きく変わっていくでしょう。
いかがでしたでしょうか。関係ないと考えていても、実は既にナノテクノロジーが近い所で使用されているという事実、また、今後はより発展した形で投入されるであろうことは火を見るより明らかと言えます。技術の革新により、多くの方が救われる時代が期待されるところです。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |