大塚製薬が開発しているデジタルセンサー内蔵のいわゆる"デジタルドラッグ"が昨年、米国FDAによる承認を得ているという事実をご存じでしょうか。医療系トピックスに関する情報を収集されている方であれば既にご存じかもしれませんが、実際にはまだ日本国内においてこのような薬剤が使用されているわけではありませんので、話にも聞いたことがない、という方も多いのではないかと思います。
さて、前述の通りここでお話をしている新薬は"薬剤にも関わらず機器を搭載"しているという点において、従来の発想を覆したものであることは間違いありません。そこで、今回は、医薬品と医療機器を組み合わせた初の薬剤である『エビリマイファイ マイサイト』について、少しご紹介しておきたいと思います。
世界でも初めてとなるデジタルメディスン"エビリマイファイサイト"は世界中から注目される画期的な薬剤であり、その動向については非常に気になる所です。既に米国において使用が始まっているものですが、この薬剤がどのようなものか、改めて少しご説明いたします。
エビリファイマイサイトは、米国FDAから2017年に承認された薬剤であり、大塚製薬の代表的な薬剤の1つであるエビリファイの錠剤に、プロテウス社が開発を行ったセンサーを埋め込んだ製剤、そして、発信されるシグナルを検出する機器及びアプリを使用することにより、患者の服薬に関する状況を記録し、医療従事者や患者のご家族など、関係者間による正確な情報共有を可能とするものです。
つまり、極小のセンサーを用いることによって、患者の状況を把握することに成功した薬剤であり、システムということになります。発売から当面の間は、米国において臨床を重ね、そのプロセスと結果を確認していくとされています。
同薬剤のターゲットとなるのは、統合失調症や双極性障害、うつ病などの精神疾患となりますが、2018年10月に出された大塚製薬者の新たなプレスリリースによりますと、プロテウス社との関係強化、グローバルなレベルにおける協業を今後拡大する契約について締結がされたとのことです。
今回開発されましたエビリファイマイサイトを始め、精神疾患領域に関するデジタルメディスンの新規開発、商業化に関しては、今後も新たな進展がみられるでしょう。また、このような展開を注視する各国の企業も、この流れに対して新たに名乗りを上げることが予想されます。
そもそも、今回のようなデジタルメディスンが開発されるに至った経緯、目的ですが、これはデジタルテクノロジーの進化により"より緻密に、より高い効果を上げるために薬剤と医療機器を組み合わせる"という発想のもと、目下様々な企業が一つのターゲットとして狙っている"モニタリング市場"への参入を狙ってのことと考えられます。
今や、デジタルアプリケーションさえあれば、遠隔地から患者の情報を比較的自由に手に入れることができる時代になってきており、この薬剤はその形の1つと言えるでしょう。
デジタルテクノロジーの進化は止まらず、AIの台頭やVR技術による感覚領域へのアクセスなど、少し前には考えもつかなかったような新たな世界へと歩を進めています。そのような中で、現在はデジタルアプリケーションによる管理機能に注目をする企業も多く、続く医師不足、技術不足などをデジタルの力で解決しようとする動きともとれます。
事実、apple watchによるヘルスケア機能などは利用者からも評価が高く、IT系企業の参入も続いているところです。今後は、よりディープな情報をデジタルデバイスによって管理し、効率的かつ合理的に患者をサポートする体制が整う、そのような未来が見えてきていると言えるでしょう。
このような技術の台頭は素晴らしいと評される半面、未知なる可能性を良くも悪くも秘めているため、まだ手放しで喜べるような段階でないことは確かです。例えば、デジタル管理にマストと言える"電波"が人体に対して必ずしも無害とは言えません。また、様々な弊害が使用する中で新たに生まれる可能性もあります。当面は、見ということで注視していきたいところです。
![]() |
ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |