医療業界ではない所ではたまに見聞きすることのあるフレーズの一つに「病院離れが始まっている」というものがあります。これはマジョリティなワードではなく、いわゆる明確なエビデンスのある話でもないため、一笑に付される都市伝説の一つとして、たまに話題に出てくるような言葉ではあります。ゆえに、それほど知られている話でもありませんし、初めて聞いたと言われる方も多いでしょう。
そこで、ちょっとしたトピックスではありますが、今回はこの話について少し触れてみたいと思います。
医師不足、患者数の増加のいうワードは医療業界においては既に馴染みのもので、"時間を持て余している"医師がいるのだとすれば、そこにはまた別の問題が生じているのかもしれません。それほど、全体としては多忙を極める医師が多く、正直なところそのような現場の話を見聞きする限りでは、病院から患者が離れていると言われても、特に信じるには値しないものとして感じます。
今後は、超高齢化社会へと向け、日本における患者数は更なる増加が見込まれています。病床数の増加を急務とする医療機関も多く、そもそも医療資源そのものが不足しているといった地域も決して少なくはありません。そのような中で、患者数が離れていると言われても、寝耳に水と誰もが思われることは間違いないでしょう。そして、確かに病院に患者が増えていることは間違いのない事実でもあります。
では、患者数も増加しているのだから「病院離れが起きている、というのは只の噂やデマの類に違いない」と考えてしまう所ですが、それは少し早計かもしれません。というのも、いわゆるデータ上で見た数字、あるいは実際に病院に訪れる患者の多くをみていても、恐らくは感知することができない方々も少なからずいらっしゃるからです。
例えば、病気になっても病院には罹らない。自分の力で治すと仰られる方の増加、あるいは様々な補完代替医療を行うクリニックへ足を向ける方も増えています。このような方々の多くは、いわゆる病院での治療では症状が回復しなかった方や、あるいは治療することが難しいと匙を投げられてしまった方と聞きますが、以前にも増してこのような考えを持つ方が増えてきているのです。
診断までは病院に通うが、治療に関しては他の方法を選択する、そういった方が増えているという話は様々な所で見聞きすることができます。国内でもそういった話はよく出ますし、海外では様々な富裕層や有名人達が「病院には罹らない、体が悪くなればホメオパシー等で治療する」と公言することも増えています。そういった話題がニュースとして上がってくることも、このようなウェーブに拍車をかけているのかもしれません。
また、近年は医療を受けることが難しいとする層も出てきています。病院で治療を行いたいが、金銭的な事情で治療を行うことが難しいとする方も増えていると聞きます。アメリカではサプリメントやホメオパシーなどを用いて、自身の体調管理をすると答える国民も決して少なくはありません。日本でもサプリメント市場は既に成熟してきており、今後同様の流れを辿っていく可能性は十分に考えられるのです。
これは何も現代医療が悪いわけではなく、社会的な時代の流れの中で、価値観の多様化や経済的な流れの変化にも、大きな要因があるものと思われます。
以前、ある商店で立ち話をしている時に、病院にお勤めの医師が、自身が癌になった場合は信頼できるサプリメントで体を治すと仰られていたと、そういう話を伺いました。
病院離れが起きているかどうか、その結論は恐らく出ないでしょうし、患者数は今後も増加していくものと思われます。ただ、その一方で"新たな道"を選択している方が確かにいる、という現実も頭の片隅に置いておきたいところです。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |