近年、高齢化社会へと確実に歩を進める日本ですが、認知症患者は年々増加傾向にあり、早急な対策が必要とされています。また、認知症に関しては国内のみならず、世界中で増加傾向にあり、これまでの数々の大企業が巨額の投資を行ってきたものの、特効薬となるような薬剤は開発されていません。
しかし、米のブレデセン博士が開発したリコード法など、認知症の薬剤を用いることなく症状を改善する方法が確立され始めている今、もしかしたら私たちは新たな局面に差し掛かっているようにも思います。そこで、今回は認知症を始めとする様々な疾患と深い関係があると言われるリーキーブレインについて、少しご紹介させていただきます。
皆さまもご存じの通り、脳には一定の条件を満たした物質しか入ることができません。その関所となっているものを血液脳関門(BBB)と呼ぶわけですが、近年の新薬開発ではこの血液脳関門をクリア、コントロールすることが一つの議題としても取り上げられていますよね。その全貌がまだ分かっていないこともあり、この部分をクリアしたパーフェクトな薬剤は存在していないと言えます。
しかし、この血液脳関門の機能が薬剤等を用いずとも、破綻あるいはコントロール機能が低下する状態が報告されています。血液脳関門は確かな選択性をもって、血流から脳に必要な物質のみを透過させることが主な役割と言えますが、この透過性が高くなり、様々な物質が脳に流入してしまう現象が起きているのです。
リーキーブレインという言葉が指す通り、脳漏れと呼べるような症状を持った患者が増えていることは、知っておく必要があるでしょう。既に国内の医師の中には、米国で広く知られているリーキーガットやリーキーブレインといった症状と各種疾患の関係を意識しつつ、診断や治療を行っている方もおられます。今後、国内でもその知名度が高まることは間違いありません。
では、血液脳関門の透過性はどのような要因によって過剰に高まってしまうのでしょうか。これに関しては、まだ明確な答えは出ていません。というのも、1つの要因ではなく、複数の要因によってこのような症状に陥っていると考えられているからです。
ただ、様々な要因の中から、1つ小麦が関与している可能性が挙げられています。小麦は私たちが日常的に食しているものですが、小麦中に含まれるグリアジンという物質を体内に吸収するとき、細胞がゾヌリンという物質を分泌し、細胞間のタイトジャンクションをゆるめることが分かっているのです。
そもそも、ゾヌリンは健常な状態でも分泌されているものですが、小麦を継続的に摂取することにより、小腸のタイトジャンクションがゆるみ、その後血流に乗った過剰なゾヌリンが血液脳関門にまで作用するという見方をする研究者も少なくありません。そのため、リーキーガットとリーキーブレインには強い因果関係があるという見方もされているのです。
もちろん、この他にもWIFIなどを始めとするマイクロ波が血液脳関門の機能を破壊するなど、既に研究結果が出ている他の要因もありますが、少なくともここに挙げた小麦に関しては、注視する必要があると言えます。
リーキーブレインでは、本来脳に入るはずのない化学物質や重金属、細菌やウイルス等が侵入しやすい状態になっていると言えます。そのため、脳の炎症の進行や脳神経への負担の増加などが見込まれます。こういった事情から、認知症やパーキンソンを始め、様々な疾患に繋がる可能性が高いとみられ、現在も研究が進められています。
まだ日本国内では知名度の高くないリーキーブレインという状態ですが、精神疾患(自閉症やADHDなど)の患者の脳では、広くみられる状態であります。この状態が何らかの他の疾患に強く関係しているのだとすれば、今後は解決することが難しかった様々な疾病に対する新たなアプローチのキッカケともなるかもしれません。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |