AIの診断は、医師と比較すると今一つツメが甘く、実用には一歩及ばないと言われていた時代が懐かしくなるほど、AIの診断精度が高まっていることをご存じでしょうか。人工知能(AI)は、日々様々な研究所や企業内で開発が進み、この記事をご覧頂いている間にも何らかの進歩を遂げているのです。
近年、AIを巡る医療関係の中で、ひときわ目立っていたものの一つが「AIの診断精度が人間の医師を越えた」というものです。これは、全ての疾病という意味ではありません。あくまでもある程度限定された状況下において、医師とAIとが診断の精度を比較するために競ったところ、幾つかの結果に置いて医師よりもAIの方が優れた診断精度を誇っていることが気らかとなったのです。
そこで今回は、最新のAIがどれほどの診断精度をもっているのか、その内容について少し掘り下げてみたいと思います。
現在のAIは比較的"単一"の学習を行うことが得意です。そのため、アレもコレもと色々なことを任せるようなことはできません。しかし、一度「乳がんの画像判定」や「皮膚がんの画像判定」といったフィールドで対決すると、AIは医師と比較すると極めて短時間(数秒程度)で医師よりも正確に判定を行って見せるのです。
2017年末にはアメリカの論文において、乳がんの転移に関する画像判定にAIが挑んだところ、11人の医師と比較して大きく上回ったと報告されています。この時の結果では、医師が30時間ほどかけて129枚の画像をじっくり確認した際にはAIとほぼ同等の精度になりましたが、実際の臨床にかけられるような短時間で挑んだ場合には大敗を喫したのです。
画像判定自体は、その性質上極めてシンプルな作業を行うことから、自動かつ高速に処理できるAIに軍配が上がることは、予想に容易いところです。
また、皮膚がんに関する別の比較検討結果においては、58人の皮膚科医が皮膚がんの判定を行った際、その精度が86.6%だった事に対して、AIは95%を超えていたのです。医師の内半数以上が実務経験の豊富な医師だったにも関わらず、画像判定となればAIの方が優れている、ということは既に明らかと言えるでしょう。
現段階においては、AIは極めてシンプルな作業を得意としています。それこそ、画像判定・診断のようなものは医師よりもAIの方が優れた結果を出すことが明らかとなっているわけであり、AIの性質や可能性を裏付けた結果とも言えます。
今後どのようになるかは分かりませんが、現段階においてはAIは"診断"においてその業務を担う可能性が期待されるところです。イレギュラーに弱いという部分もありますから、任せられることはごく一部の事がらに限定されるかもしれませんが、それでも上手に使えば医師のよき相棒になる可能性を秘めているのは間違いありません。
ただ、今の段階ではAIにシンプルな作業しか任せることができないと言われていますが、ごく短時間でAIがここまで進化を遂げたことを考えれば、今後は複数の事柄を上手に処理することが可能になることは間違いありません。そうすれば、医師免許を持たないAIはあくまでも診断の補助として使われ、AIの判定結果を元に医師が診断、治療を行うというスタイルになるかもしれません。
また、判定結果から必要な治療についての情報をそのまま受け取ることも可能になるでしょう。もしそうなれば、実務としては負担は減るかもしれませんが、医師としての役割は大きく削られてしまう可能性も否めないでしょう。
AIの開発には巨額の資金が投じられ、世界各国がこぞって開発を競っている最中と言えます。その中で、高い診断精度を誇るAIが複数出てきているということは、今後診断あるいは診断の一部をAIが担う可能性が極めて高いと言うことであります。ただ、AIはデジタル処理を行うことは可能なものの、イレギュラーには弱い傾向がありますから、医師の全ての役割をAIが担う、ということは恐らくはないのでしょう。
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ZY 検査技師として医療機関に勤務。代替医療、食事療法を中心に学んだ経験を活かし、健康をテーマにした内容を広めるべく様々な活動を行っています。食、医療に関しての関心が強く、ライターとして活躍させて頂いております。 |